乃木希典は明治天皇に夫婦で殉死 - 1912年(明治45年/大正元年)

乃木希典は明治天皇に夫婦で殉死 – 1912年(明治45年/大正元年)

乃木希典(のぎ・まれすけ)は、これぞ日本人と言えるような人でした。

乃木希典軍人であり、明治天皇崩御に伴い夫婦で殉死をします。

現代では考えられないような行為ですが、当時の人たちからは「軍神」としてあがめられました。

この年9月、明治天皇の大喪の儀式当日に、家族と晩餐をとった後、夫人は胸に短刀を突き刺し、乃木は軍刀で腹部を切って、のどを一気にはねました。

天皇に対する忠誠心と、個人的尊崇によるものといわれています。殉死は称賛され、乃木神社まで創建された一方で、さまざまな論議を呼んだのも事実です。

森姐外は『興津弥五右衛門の遺書』のなかで乃木の武士道をたたえましたが、志賀直哉などは「馬鹿な奴だ」と日記に残しています。

遺書には家は断絶させるようにとありましたが、長州軍閥が存続を画策します。

遺書発表は引き延ばされたのですが、その全文を国民新聞が号外でスクープし、軍閥巨頭、山県有朋、寺内正毅らが非難を浴びました。

以後、乃木の殉死は政治的に利用されていくことになります。

戦前の教科書には、その精神性が軍人のかがみとして取りあげられました。しかし西南戦争で軍旗を失って自決を考えたり、日露戦争の旅順攻略戦では大量の死者を出すなど、軍人としてはむしろ、機略に乏しかったのではないかと、現在では評価されています。

1907年から学習院長となり、生来の精神主義をもって、皇族子弟の教育にあたっていました。

山口県生まれ(1849~1912年)。

1912年の主な出来事。

■事件/松本市大火。東京帝国大卒業式に行幸。高知県下暴風雨、被害甚大

■世相/日露協金設立。財団法人大阪職業紹介所設立。大阪に日本最初の会計士が開業。ビリケン人形流行。女学生の大幅リボン流行。米価騰貴で外米食流行

■交通/東京にタクシー出現(6台)。郵便自動車出現。京成電車開通

■企業/久原鉱業会社設立。東京生命保険会社協会設立

■労働/東京の船頭、同盟スト

■文化/上杉慎吉・美濃部達吉憲法論争。JTB(ジャパン・ツーリスト・ビューロー)創立。拓殖博覧会を上野で開催

■教育/同志社専門学校を同志社大と改称

■宗教/仏教各宗懇話会創立。日本基督教会同盟開催

■科学技術/TYK無線電話特許。住友伸鋼所、日本最初の引抜鋼管製造開始。田熊常吉、タクマ式ボイラー発明。日本航空協会創立

■軍事/陸軍歩兵学校創立。河野・金子両大尉の海軍初飛行。徳川大尉初めて帝都一周飛行

■女性/中野-昌平橋間に婦人専用電車。東京女子医学専門学校(東京女医学校昇格)

■文芸/夏目漱石「彼岸過迄」。森姐外「興津弥五右衛門の遺書」。志賀直哉「大津順吉」。永井荷風「新橋夜話」。長塚節「土」。徳田秋声「黴」。坪内逍遥文芸功労表彰

■美術/白樺、近代美術展ひらく。光風会創立。ヒューザン会展覧会

■音楽/外人素人劇団「ノーマンディの鐘」上演。白木屋で少女歌劇。「月刊楽譜」創刊

■芸能/土曜劇場成立。文芸協会第6回公演「マグダ」禁止。「演劇倶楽部」創刊。最初の少女歌劇「浮れ達磨」。近代劇協会結成

■映画/松之助映画大当たり。映画「ジゴマ」禁止。白瀬矗中尉南極探検の写真製作。最初の活劇「火の玉小僧」。日活(日本活動写真株式会社)・大正活動写真株式会社創立

■スポーツ/朝吹常吉・山崎健之亟両選手(テニス)、マニラのカーニバルに参加

■出版/「演芸倶楽部」創刊。厨川白村「近代文学十講」。美濃部達吉「憲法講話」。加藤弘之「自然と倫理」。筧克彦「古神道大意」。「近代思想」「友愛新報」創刊。井上哲次郎「国民道徳概論」。桑木巌翼「哲学綱要」

■流行歌/都ぞ弥生。乃木大将の歌。春の小川。村の鍛冶屋。広瀬中佐。橘中佐

■流行語/諒闇不景気。閥族打倒。大正維新。覚めたる女。新しい女。

1912年はどんな時代であったのか。

西園寺首相は財政緊縮の方針でのぞみ、海軍充実費・陸軍2個師団増設・鉄道広軌改築案を見送って、行財政整理(改革)の実現をめざしました。

その結果、陸軍の増師案は暗礁に乗り上げたため、陸相が辞任して、その後任をめぐって内閣は総辞職という憂き目にあいます。桂太郎の出馬で収まりますが、陸軍の横暴に世論は憤激し、憲政擁護の動きが慌ただしくなります。

明治天皇は7月14日に発病し、30日に逝去しました。それによって、国民の間に、ある種の寂寥感が漂います。

皇太子嘉仁が即位し、年号は大正と改まりました。大喪の日、乃木希典夫妻が自刃するという、現代では考えられないような出来事が起こりました。

1912年(明治45年/大正元年)

明治天皇逝去を伝えた1912年7月30日の記事

明治天皇逝去を伝えた1912年7月30日の記事

1.1 南京臨時政府成立、孫文、中華民国臨時大総統に就任

1.1 安田保善社(安田財閥の持ち株会社)設立

1.14 山県有朋、桂太郎に「満州に出兵の好機」と進言

1.16 大阪難波新地で大火、焼失5000戸

1.18 ロシア社会民主労働党、レーニン指導下にボリシェビキの中央委員会設立、メンシェビキを追放

1.18 英探検家スコット、南極点に到達

1.23 国際阿片条約署名(大正4年2月11日発効、大正9年1月10日公布施行)

1.28 白瀬南極探検隊、南緯80度05分に到達

1.29 中華民国政府・大倉組間に300万円借款成立、米・英抗議

1.29 漢冶萍公司日華合弁の仮契約締結

1.29 川島浪速、蒙古喀渥沁(カラシン)王蒙古独立について契約締結(満蒙独立運動)

1.29 東京市、外債9000万円成立

2.12 清国宣統帝白溥儀退位、袁世凱に臨時共和政府組織の全権を委譲、清朝滅ぶ

2.12 アルゼンチン男子普通選挙法制定

2.13 孫文、大総統辞任を表明

2.15 中華民国臨時大総統選挙執行、袁世凱が当選

2.21 政府、米・英・独・露など列国に中国新政府承認に関し、列国権利・外債の保証、列国協調の2原則を提議

2.23 住友銀行、株式会社に組織変更

2.25 原敬内相、神道・キリスト教・仏教の3教代表者懇談会を開き、国家目的に協力を要請

2.28 4国借款団、北京政府に200万両の借款を供与

2.28 東洋拓殖会社、朝鮮移民を募集

3.1 ロンドンで婦人参政権を求める女性社会政治同盟(WSPU)がデモ、投石、放火、公共物破壊

3.5 衆議院、選挙法改正案(小選挙区・単記投票)可決、23日貴族院、両院協議会案を否決

3.10 袁世凱、北京で臨時大総統就任。首都を北京とする

3.12 朝鮮の米作及び蚕業の改良奨励

3.18 南満州における日本の権益を留保して4国借款団(英・米・独・仏)に参加のむね、4国政府に申し入れ

3.27 朝鮮公立小学校官制公布(4月1日施行)

3.28 朝鮮、関税令・同噸税令・同保税倉庫令・同関税定率令各公布(4月1日施行)

3.28 英下院、婦人参政権を否決

3.29 呉海軍工廠2500人同盟スト(4月5日まで)

3.29 沖縄県に衆議院議員選挙法施行の勅令公布

3.30 仏・モロッコ間にフェズ条約調印され、モロッコは仏保護領となる

3.- 綿花栽培協会解散

4.13 石川啄木死去、26歳

4.15 英国客船タイタニック号、ニューファンドランド島沖で大氷山と衝突沈没、1513人死亡

4.29 北海道夕張炭坑ガス爆発、坑夫276人死亡

5.8 警視庁、深川廻米市場の延取引禁止につき臨検執行

5.12 南極探検の白瀬矗中尉の一行、長崎に帰着

5.15 第11回衆議院総選挙

5.28 米および籾の輸入税率(軽減)に関する勅令公布

5.28 メチルアルコール取締規則を公布

6.8 日本鋼管株式会社設立

6.15 新橋-下関間に特急列車初運転。展望車登場

6.18 英・米・仏・独の4カ国借款団に日・露が加わり、6カ国対中国借款団成立

6.18 米価暴騰で白米商人の不正桝使用者多数検挙

6.20 南極探検の開南丸、東京湾に帰着

6.26 富山県生地で米騒動始まる。県下におよぶ

7.1 米価暴騰新記録(石当たり23円買いの高値出現)、堂島市場立ち会い一時停止、正米相場1升31銭8厘

7.3 日仏銀行、パリで設立

7.3 大阪の通天閣(新世界ルナパーク)開業

7.5 ロンドンで国際無線電信条約及び最終議定書・付属業務規則調印(1913年6月30日批准公布、7月1日施行)

7.6 第5回オリンピック・ストックホルム大会開催。日本初参加(陸上の三島弥彦・金栗四三)

7.7 イタリア社会党の革命派ムソリーニ、「アヴァンティ!」紙編集長となる

7.15 東京中央郵便局、新橋および上野間に郵便自動車の使用を開始

7.20 宮内省、天皇重体と発表、娯楽場すべて休業、東株市場恐怖相場出現

7.20 樺太縦貫鉄道全通

7.28 天皇危篤の報に市民二重橋外に集まり、回復祈願

7.30 明治天皇逝去、59歳

7.30 皇太子嘉仁即位、「大正」と改元。出典、易経の卦臨彖伝「大亨以正、天之道也」正しきを以てし、大いにたてまつるところ、すなわち天の道なりの意

8.1 友愛会創立委員会、東京で開催、15日発会式、会長鈴木文治

8.13 桂太郎、内大臣兼侍従長に就任

8.13 朝鮮総督府高等土地調査委員会官制・全道地方土地調査委員会官制、同土地調査令公布(即日施行)

8.23 第29回臨時帝国議会開会

8.25 宋教仁ら、国民党を結成、理事長は孫文。中国革命同盟会は発展的解散

9.13 明治天皇大喪の儀、東京青山葬場殿で挙行。陸軍大将・乃木希典(62歳)、妻静子(52歳)自宅で殉死

9.14 明治天皇を伏見桃山に奉葬

9.22 全国に大暴風雨、近畿以東・東北・北海道の被害甚大

9.26 恩赦令・大赦令公布

9.- 全国にコレラ発生、患者1000人余

10.17 ブルガリア・セルビア、トルコに宣戦、19日ギリシャも対トルコ宣戦、第1次バルカン戦争始まる

10.18 イタリア・トルコ間にローザンヌ講和条約調印、伊土戦争終わり、伊のトリポリ併合黙認される

11.5 米大統領選挙で民主党のウィルソン、セオドア・ルーズベルトとタフトを破り当選

11.22 閣議、陸軍大臣・上原勇作の2個師団増設案提出、30日財政上実行不能として否決

12.2 上原陸相、帷幄上奏(首相を経由せず直接天皇に)によって単独で辞表捧呈

12.3 バルカン3国対トルコ間に休戦条約調印

12.5 陸相後任難のため第2次西園寺公望内閣総辞職

12.7 元老会議、松方正義を後継首班に推挙、10日辞退

12.12 第7回元老会議、平田東助を後継首班に推挙、14日辞退

12.13 東京の新聞雑誌記者・弁護士ら憲政作振会を組織、2個師団増設に反対

12.14 尾崎行雄・犬養毅ら50余人、時局問題有志懇談会を開催

12.15 政友会大懇親会、官僚政治根絶・憲政擁護を決議

12.16 バルカン講和会議、ロンドンで開く

12.17 桂太郎に後継内閣組織の命令

12.19 第1次護憲運動始まる。第1回憲政擁護連合大会、東京で開催

12.21 海軍大臣・斎藤実に留任の勅語

12.21 第3次桂太郎内閣成立

12.27 第30回帝国議会開会

12.27 築地精養軒で憲政擁護大懇親会

年号が変わるという、節目の年になりました。日本がもっとも躍進した、明治という時代が終わりを告げたのです。

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