世界恐慌の年、山本宣治が刺殺される - 1929年(昭和4年)

世界恐慌の年、山本宣治が刺殺される – 1929年(昭和4年)

山本宣治(やまもと・せんじ)は生物学者であり、政治家でもありました。

山本宣治治安維持法の改悪に真っ向から反対し、この年3月、東京・神田の定宿で労働者だと偽って訪れた右翼の黒田保久二に刺殺されます。

心臓を刺されながらも、暴漢に組みつきもろとも階下へ落ち、大量の血が階段に流れたそうです。治安維持法の大幅改定が衆議院で承諾された、その日の夜でした。

山本宣治は、京都で花かんざし屋を営むクリスチャン夫婦のひとり息子でした。病弱だったため、花づくりなどをしながら独学します。

園芸家を志して上京後、18歳でカナダに渡り、働きながら生物進化論や社会主義思想などを学びました。大逆事件に衝撃を受け、憤慨の手紙を家族に書いています。

帰国後、東京帝大を経て同志社大、京都帝大の講師になります。進化論などを講義していましたが、来日したサンガー女史の講演を通訳し、産児制限に共鳴します。労働運動にかかわるようになったのです。

産児制限研究会を組織し、講演に東奔西走します。しかし「産めよ増やせよ」が国策だった当時、講演中止にあい、大学からも追放されました。

ならばと労働農民党の活動に参加し、1928年の第1回普通選挙で当選しました。思想弾圧法・治安維持法そのものの廃止を求める唯一の議員でした。

京都市生まれ(1889~1929年)。

1929年はどんな時代であったのか。

■事件/説教強盗逮捕。満鉄煙台炭坑で爆発、死者119人。中国駐剳公使・佐分利貞男怪死事件。奄美大島大暴風

■世相/ターミナルデパート阪急誕生。パーマネント。マネキン。競馬。麻雀。東京市内に航空郵便ポスト

■企業/久原鉱業を日本鉱業と改称。昭和製鋼所成立。呉羽紡績設立

■軍事/陸軍が東京-台北間、海軍が横須賀-サイパン(南洋)間の飛行に成功

■文化/国宝保存法制定。民間航空開始。小田原急行電鉄江ノ島線開通。大阪築港竣工。東京日本橋三井本館落成

■教育/千葉高等園芸学校創立

■科学技術/W.ハイゼンベルク(独)とW.パウリ(オーストリア)、量子場の一般論(場の量子論)発表。国立水産試験場創立。万国工業会議および世界動力会議、東京で開催。地震学会創立。「浅間丸」建造

■女性/明治大学女子部設立

■文芸/中野重治「鉄の話」。小林多喜二「蟹工船」。徳永直「太陽のない街」

■美術/青竜社創立

■音楽/山田耕筰の「堕ちた天女」上演

■芸能/築地小劇場劇団分裂(劇団築地小劇場・新築地劇団)。カジノフォーリー開場

■映画/トーキー時代来る。「生ける人形」。「斬人斬馬剣」。「首の座」。「大学は出たけれど」。「灰燼」。「日本橋」

■スポーツ/大日本スケート連盟誕生(氷上連盟とスケート連盟が合体)

■放送/全国中継を開始

■出版/「プロレタリア科学」、「法律時報」創刊。「改造文庫」発刊。戸坂潤「科学方法論」

■流行歌/東京行進曲。君恋し。紅屋の娘。鞠と殿さま

■流行語/緊縮。大学は出たけれど。

1929年の主な出来事。

抗日・排日運動の激化、パリ不戦条約問題の紛糾、対共産党取締問題(4・16事件)、疑獄汚職事件の続出など、内外政策の破綻に直面した田中内閣は7月に退陣しました。

後継の民政党・浜口内閣は慢性的不況を克服するため、消費節約・貯蓄奨励を説いて緊縮財政の確立を図り、産業合理化審議会を設けて「合理化」政策を推進、金輸出解禁の断行で経済立て直しを図りました。

しかし、10月24日ニューヨークに起きた世界恐慌が日本経済をも巻きこんだのです。

1929年(昭和4年)

ニューヨーク株式大暴落について伝えた1929年10月26日の記事

ニューヨーク株式大暴落について伝えた1929年10月26日の記事

1.7 漢口で日本陸戦隊が中国人を轢殺、排日スト、日貨封鎖へ

1.17 労農大衆党、京都で結党

1.19 日華関税条約成立(2月1日実施)

1.31 衆議院、「満州某重大事件真相発表決議案」を否決

1.- 仁科芳雄とF.クライン(スウェエーデン)、コンプトン効果に関するクライン・仁科の式発表

2.1 若槻礼次郎、貴族院で田中義一内閣の諸政策を痛撃

2.15 染料関税を撤廃

2.17 山梨県下の大地主400人、小作争議に対抗して山梨土地株式会杜を設立

3.5 労農党代議士・山本宣治、七生義団員・黒田保久二に刺殺される、39歳。4月30日犯人出所が問題化

3.14 横浜船渠従業員4900人スト、東京モス紡績、横浜市電でも争議スト

3.22 衆議院、小選挙区制案を政友・民政両党妥協で可決、貴族院で審議未了

3.26 航空郵便規則制定(4月1日施行)

3.28 日華間で済南事件協定調印、5月20日撤兵

3.28 家蓄保険法、糸価安定融資補償法公布(9月1日施行)

3.- 大学卒業者の就職難(東京帝国大で就職率約30%)

4.1 救護法公布(1932年1月1日施行)

4.1 東京文理科大、広島文理科大を新設。神戸商業大、東京工業大、大阪工業大が昇格設置

4.1 内地-朝鮮・満州連絡定期航空輸送、1週間3往復実施

4.1 初の国産サントリーウイスキー発売(寿屋)

4.5 東京実業組合連合会・東京商工会議所、商業労働者の週48時間労働に反対

4.12 資源調査法公布(12月1日施行)

4.13 後藤新平死去、71歳

4.15 日本無線電信株式会社が日欧間無線電信開始、愛知県碧海郡に発信所開設

4.16 4・16事件。日本共産党弾圧で党員検挙。市川正一、三田村四郎ら292人起訴

4.27 日本最初のロータリークラブ大会、京都で開催

5.1 東京市、午砲を廃止してサイレンに

5.2 南京・漢口両事件解決、協定調印

5.19 婦人市政研究会が東京ガスの値下げ運動、ガス非買同盟組織を決定

6.1 文部省に社会教育局を新設

6.1 中華民国が南京で孫文慰霊祭、犬養毅、頭山満が国賓待遇で参列

6.3 政府、中華民国国民政府を承認

6.10 拓務省設置、田中義一首相が拓相兼任

6.15 東京-立川間に省線電車開通

6.25 東京交通労働組合(東交)結成

6.26 枢密院御前会議、不戦条約を留保宣言付きで可決

6.28 万国郵便条約調印(1931年6月26日公布、7月1日施行)

6.30 トーキー化のため、邦楽座で楽士を解雇と発表

7.1 満州某重大事件(張作霖爆死事件)の責任者処分発表(河本大作大佐停職)

7.1 女性および年少者の深夜労働禁止(工場法改正実施)

7.2 田中内閣、張作霖爆死事件の処分問題で総辞職、民政党・浜口雄幸内閣成立、外相・幣原喜重郎、蔵相・井上準之助

7.7 在外正貨高発表当分中止に決定

7.8 金解禁含みで、各市場一斉に暴落

7.9 浜口雄幸首相、新内閣の10大政綱を発表。金解禁断行など

7.11 中華民国、東支鉄道を回収

7.14 中ソ国境封鎖(17日ソ連が対華国交断絶を宣言)

7.15 国有鉄道建設規程制定(8月1日施行)

7.15 日本航空輸送会社、東京-大阪-福岡間に定期旅客輸送開始

7.19 社会政策審議会官制公布

7.25 日英米仏伊独の6カ国、東支鉄道の中ソ共同管理を勧告(27日中国が承認)

8.6 ドイツ賠償のヤング案討議ハーグ会議開催。修正可決(31日閉会)

8.15 ウラジオストク第2回汎太平洋労働組合会議に山本懸蔵ら日本代表出席

8.19 15日にフリードリヒスハーフェンを出発した訪日ドイツ飛行船ツェッペリン伯号が霞ケ浦に着く。26日太平洋横断に成功、ロサンゼルスに着く

8.27 東京放送局が求人求職ニュースを放送

8.28 浜口首相、緊縮政策を全国に放送。「全国民に訴う」を全戸に配布

8.29 北海道鉄道疑獄、東大阪電鉄疑獄事件に続き、勲章疑獄の汚職事件発覚

9.1 東支鉄道問題に関する中ソ交渉協定成立

9.1 内務省社会局が全国失業状況調査を初めて実施

9.4 反帝同盟員の戦争反対デモで多数検挙

9.12 社会政策審議会が失業救済案決定

9.15 東京-下関間特急に「富士」「桜」。国鉄の列車愛称のはじめ

10.1 英ソ国交回復

10.1 小西六(のちのコニカ)、国産初の「さくらフィルム」発売

10.12 犬養毅、政友会総裁となる

10.15 全国官吏の俸給1割減額を閣議決定、22日判事検事などの反対運動で政府撤回

10.24 世界恐慌はじまる。ニューヨーク株式大暴落で糸価暴落

11.1 内務省、失業者数30万195人と発表

11.1 労農党結党大会開催、中央執行委員長に大山郁夫

11.3 朝鮮光州の学生、植民地的差別教育に反対、日本打倒で決起、5万4000人が参加

11.19 蚕糸中央会、12月15日から31日までの全休および2月以降4カ月の全国的操短、共同保管量拡張を決定

11.20 資源調査令公布(12月1日施行)

11.21 政府、1930年1月11日を期し金輸出解禁断行を発表

12.5 東京市電ゼネスト、警視総監が調停

12.10 社会民衆党分裂

12.25 日本大衆党分裂、反対派の堺利彦ら、東京無産党を結成

12.26 第57回帝国議会開会

12.29 上越線清水トンネル貫通

世界恐慌によって、世界中の経済に激震が起こりました。

日本経済ももちろんですが、政治にも大きな影響をもたらしたと言えるでしょう。

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