読むだけで痩せる。 その3

読むだけで痩せる。 その3

この記事は「読むだけで痩せる方法の原稿」です。その1から順番に読む必要があります。

読むだけで痩せる。 その3

読むだけで痩せる。 その1
読むだけで痩せる方法の最初のページです。読み方は次に指示があるまで、小説を読むような調子で読んでください。気軽に読み進めてもらえ...

この記事は「読むだけで痩せる。 その2」からの続きです。

  • またここからは、しばらく気楽に読んでください。

「フュースが食べるのはね、実は、ダーリンなんだ」

それを聞いたとたん、光はすかさず開いた口を両手で押さえ、横にいる僕に至っては、まゆを寄せながら不快な気分を表情ににじませた。

――残酷なことは、あまり好きじゃない。

「でもね、ここからが大事な話だから、よく聞いてほしい」

おじちゃんは申し訳なさそうな顔をしながら、あとを続けた。

「月には二種類の生物しかいないんだ。フュースとダーリン。調査の結果、この二種類の生物は何万年も前から月に生息していることがわかった。でもそうだとしたら、おかしいだろ。フュースはダーリンを食べる、つまり天敵なんだよ。それなのにダーリンは滅びることもなく、現在もなお月で暮らしている。考えられないことだ」

確かにそう言われてみれば、そうだ。

「フュースがダーリンを食べ尽くせば、フュース自身も絶滅するしかないだろうし、普通なら、彼らはとっくに月からいなくなっていてもおかしくない。なのに、この二種類の生物はなぜ、今も月に存在しているのだろうか」

おじちゃんは顔を真っ赤にしながら、熱弁をふるった。その勢いに押されて、僕はほとんど相づちさえも打てず、聞き入るしか他にやることがなかった。

「学者たちはこの疑問に対して、何十年も挑み続けた。けれど残念ながら、いまだに真相が解明されることはなく、そればかりか謎はいっそう、深まるばかりだ。まさに宇宙の神秘だと言える」

「どっちがママで、どっちが子どもなの」

また光のやつが意味不明なことを口走った――フュースがダーリンの天敵だと言ってるんだから、やつらが親子であるはずなんてないじゃないか。

「お前は少し黙ってろ」

すぐさま光に注意をしたが、光のことばを聞いたおじちゃんが、予想外にもおかしな反応を見せた。

僕らの前にひざまずき、両手で顔を覆ってしまう。次にその手を天に向かって突き上げた。「君は、天才だ」感極まったようにそう叫び、まなこを充血させながら、体を小刻みに震わせた。

それを間近で見つめる光のやつは、僕のほうに一瞬、顔を向けてから、不気味な笑いを振りまくのみ。

確かにある部分だけならば、僕もたまにこいつのことを天才だと思うことがある。

「光ちゃんの言うとおりだ。フュースとダーリンとの関係は、まるで親子のようだ」

おじちゃんが突然、立ち上がって、僕らに背中を向けた。その様子がなんだか少し心配になったもんだから、身を乗り出すようにしながら、おじちゃんの横顔をのぞいてみた。

そこで僕はぞっとした。

どうやら口もとが不自然な感じで震えている。それに合わせて訳のわからないことばを口走っていた。「そうだったのか――いや、ひょっとして、でもまさか」意味がわからない。ただしこうなったら、僕も黙ったままではいられなかった。どうも光のやつが目立ちすぎ。

「どう考えたって、親が子どもを食べたりするのは、おかしいんじゃないですか」

天敵でありながら、親子関係まで結んでいる可能性があるなんて、僕は絶対に認めたくなかった。

「卓君の言いたいことも、僕にはよくわかる。でもね、今までの調べによると、ダーリンはネズミのように繁殖力の高い生物ではないようなんだ。それでも彼らが何万年も生き続けてきたということは、数が減ってくれば、フュースはダーリンを食料化しないということになる。つまりフュースっていうやつは、ダーリンが絶滅すれば、自分たちも生きていけないことを、本能的に知っているとしか考えられない」

おじちゃんの今の話からすれば、フュースはどうやら、食いしん坊万歳的な性格ではないらしい。

「そこになんらかの愛情があったとしても、不思議なことではないと思うんだ」

おじちゃんはようやく、少し落ち着いた表情を見せた。僕らに向かって笑いかけてくれる。

「ねえねえ、フュースって怪獣なの」

光のやつがまた、おじちゃんに向かって質問した。しかも両手の指を体の前でもてあそび、すごくだらしない格好をしながらだ。

「そんなことはないさ、フュースは怪獣なんかじゃない」

「だって、とても怖い顔をしてるんでしょ」

「生物っていうのはね、住む環境によって、暮らしやすい体に進化していくものなんだ。それからすると、みんな合理的な姿をしているもんだし、僕たち人類の美的感覚なんかで、フュースの外見を判断したりはできないというわけさ」

確かにそのとおりだと思う。光やママを毎日、見ている僕にとって、今の説明はとてもわかりやすかった。

「フュースの体長は三メートル以上もある。その上、一般的に言えば、やはりグロテスクな姿だと言えるかもしれない。でもただそれだけで、フュースのことを怪獣だと決めつけるのは、よくない考え方だ――あっそうだ。フュースに興味があるんなら、彼の姿を収めたディスクを持ってるから、なんなら今から見せてあげようか」

「見たい見たい見たい」光がそう叫び、両手を胸の前で交差した。

僕は落ち着いた素振りを崩さなかったが、内心は光とまったく同じ気持ちである。謎の生物フュース、まさか彼の姿を拝める日が来るなんて、とても信じられない、というのが正直な感想だった。

「いいよ、見せてあげるとも。ただし何度も言うようだけど、友達どころか、パパやママにもこのことは絶対に内証だよ」

そう言いながら、おじちゃんは背後にあるテーブルに手を伸ばし、そこにあるディスクのような物を抜き取った。

「わたしたち、パパなんていないよ」

せっかくことがうまく運ぼうとしているときに、光のやつがまた余計なことを口走った。

「死んじゃったのかい?」

おじちゃんがまぶたをせわしく振りながら、光のそばに駆け寄って声をかけた。対する光のほうは、まゆを寄せながら両手で顔を隠し、そのあとのどの奥で変な音を連発した。

「うそをつけ、パパはちゃんと生きてるじゃないか」

光をどなりつけてから、おじちゃんのほうへ向き直った。

「――離婚しただけです」

それを聞いたおじちゃんはひどく驚いた様子で、こぢんまりとした目をぱちくりさせながら、僕と光の顔を何度も見比べた。

「だって、ちっとも会いに来てくれないんだもん」

光のやつは口をとがらせて文句をひとしきり。それを見たおじちゃんは、光の肩に右手を載せて、やつを懸命に慰めようとしている様子である

「その話はもうなし。そんなことよりも、これからみんなでフュースとご対面だ」

おじちゃんがいくら取りなしても、光はいまだに膨れっ面を収めようとはせず、それを見ているとなんだかすごく腹が立った。

「じゃあ今から始めるよ。このディスクを研究所以外の者に見せるのは、初めてのことなんだ。だから、僕だって興奮してるよ」

研究所って、いったいなんのことだろ――おじちゃんの何気ない一言が、とても気になった。だけどおじちゃんは周囲の様子には構いもせず、テーブルの上に置いてあるコンピューターに歩み寄った。そのあとパソコンにディスクをセットした。

読むだけで痩せる。 その4
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読むだけで痩せる。 その4」へ続きます。

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